ボウリングほど使用するボールやシューズによってスコアーが左右される球技も珍しい。体力に応じて公式戦で使える重さがいろいろあるのも、他の球技ではあまり見当たらない。使うボールのパフォーマンスとレーンコンディションとのマッチングを間違えると２００点が１２０点にスコアーダウンするようなことは日常茶飯事です。
古い記録ですが、ＡＢＣの公式記録には３００点をふくむ３ゲームシリーズ５０２点という記録があります。３００点を打って興奮したのか残り２ゲームで２０２点しか打てなかったということらしいのです・・・。
ボウリングは終わってみなければ判らない コワ～イ スポーツです。ボウリングがアベレッジのスポーツだと言われる所以はこんな所にあるのでしょう。
トップボウラーが試合で良い成績を収めるにはレーンコンディションを読むと云う技能が先ず要求されます。レーンコンディションが読めたら、次にどのボールを使うのがベストかというボール選択の技能も要求されます。
次いで、どのようなラインで攻めるかという、ライン取りの技能も必要です。したがって、ボウラーは、遭遇するであろうレーンコンディションに対して、貴方自身の球質に合ったボールを準備する必要があります。さらに、レーンコンディションは現実には、必ず１球毎にブレイクダウンをして変化して行くので、この変化に対応してゆく能力が必要となります。
テレビで見るPBAツアープロの基礎体力・技能・コンディションから生まれる球質は一般ボウラーとは全くかけ離れたレベルの高いものです。プロと同じボールを使えばプロと同じような球質が投げられると期待するのは無謀です。TVで見るPBAツアープロと同じなのは、ボールの大きさ・レーンの巾と長さ・ピンの数くらいのみので、他の条件は貴方とは全く異なることを理解しておいて下さい。もちろんレーンコンディションも違います。
そこで、トッププロのボウリングと貴方のボウリングとのギャップを埋めて、貴方のもっているスポーツ能力に見合った、最適なボウリングが出来るボールを選択してドリルするのが私達プロショップスペシャリストの仕事なのです。アメリカでは、私のような仕事をする職人をテクニカル・サボーターやプロショップ・スペシャリストと呼び、熟練をつんだ高度な職種として米国のスボーツ業界では既に認知されています。そしてその一握りのベテランたちの殆どが３０年以上の経験を持ったこの道一筋の大ベテランなのです。
『このボールは曲がるボール』とか『よく走るボール』などとよく会話されているのを耳にしますが、ボールにはエンジンもハンドルも付いてはいません。したがってボールはそれ自体がフックしたり、走ったりすることはありません。この点誤解が多く、物理的にはありえないことなのです。思い込みや錯覚なのです。
正しいフック回転即ち『正しいリボリューションアングル』を持ったボールをリリースした時に、初めてボールの持っている個性が大きく出たり、控えめに出たり，早く曲がり始めたり、ゆっくり曲がり始めたりするものなのです。
特に「走る」という現象は、リリース時のリボリューションアングル（回転角度）と、ボールの直進性方向との違いから生まれる来る副産物で、スキッドといわれるものです。スキッドが適度に長いとフックはシャープになり、俗に言う「ハシッテキレル」ボールになります。このタイプのボールはストライクは華やかですがブレイクダウンにより1球毎にフッキングポイントが変化しコントロールの継続的維持は難しく、ストライクが続かないと云われ、アメリカのトッププロにはあまり好まれていません。
このように、日本を含むアジアとアメリカではボールの好みがまったく逆なのはこの辺りに理由があるのです。こんな理由で私の設計していたBrunswickインターナショナル・ゾーンのシリーズは、日本人好みに比較的スキッドゾーンの長いボールに仕上げています。
ボールは摩擦係数が低ければ低いほどスキッドの時間と距離が長くなります。反対にボール表面の摩擦係数が高いと、早くロールに移行し早くフックが始まります。場合によっては、途中でエネルギーを消耗してしまいバックエンドでロールアウトしてしまうケースがあります。当然のこととして、回転角度が小さいと（タテ回転）スキッドするエリアが短くなり手前からフックが始まります。したがってタテ回転でハシルボールなど現実には存在しないのです。
もしあるとすれば、ものすごい回転スピードによる自転力で走るか、投球自体にものすごいスピードがある場合に限られるでしょう。
図でもお解りのように、ボールの個性がレーン上のどのエリアでどのような反応をするのかを完全に理解したうえで、貴方の球質やレーン・コンディションに合わせてボールを選択したり、ピンプレースをしたりする必要があります。
ボール選択には、髙田誠式 ボール・ラインアップチャートの使用が有効になります。貴方が今持っているボールのラインアップが正しいかどうか一度チェックしてみてください。
自分自身で判断が難しい方はどうぞ髙田誠プロショップにお出かけください。貴方に最適なボールは何かを一緒に考えましょう。
次回は、『良いボールには個人差がある』というテーマです