2012.02.25
『日本のジュニア アスリートに感動』

先日、所用で長崎県佐世保のホテルに一泊した。
ここで泊まったホテルでの朝の出来事に感動し、一日中さわやかであった。

朝、1階のレストランに朝食に入った、奥のほうに20名前後の女子高生が食事をしていることはレストランに入った当初から気づいていた。
ビュッフェスタイルの朝食を、全員が何度も何度もご飯のおかわりに立ち、しっかり食べている様を横目に見ながら、腹ペコだった早稲田大学野球部時代を想い出してしていた。 高田馬場駅前の屋台のソース焼きそばが30円の時代だ。屋台のオヤジさんが、学帽の形を見て体育会系の学生には
『頑張れ!! 』
と応援の意味を込めて盛りを多くしてくれたのが嬉しかった。

当時の早稲田の体育会系の学生帽はスポーツ型といって坊主アタマに似合うように薄型に作ってあったから見る人が見れば一目でわかったのだろう。

さて本題に戻ろう。ここからが素晴らしかったのだ。
いよいよ食事が終わると、全員がいっせいに立ち上がり、無言のまま食器を片隅のテーブルにお皿の大きさ別に積み重ね終わると、今度はテーブルをきちんと拭き始めた。この作業が終わると、『ご馳走様でした』との声を残して一列に並び一糸乱れぬ歩調でレストランを出で行った。
私を含めてレストランに居た20人前後の客はこの一連の見事すぎる出来事にしばらくはポカンとし、続けて和やかな微笑が全員に走った。
この女子学生たちの一連の作業は自主的なもので、先生や監督に強制されたものではないことはこのレストラン居た全員が知っていた。
『団体スポーツで訓練されたマナーや所作はこんなところに現れるのだな』と感動し、現在スポーツ指導の立場にある私は、この若者たちの行動が嬉しくて熱いものがこみ上げた。『スポーツをやっていてよかった』とつくづく思った。
レストランを出て行く少女たちのジャージーの背中には西陵高校という名が誇らしく刺繍してあり、スポーツの盛んな長崎の高校である。後でフロントで確認したらバレーの試合に来ている選手たちとのことだった。
同時に西陵高校には情熱のある素晴らしい監督や先生がいるのだろうと推察した。

『最近の若者はダメだ!!』と言う大人たちが多いが、これは間違っている。
我々年寄り達よりもはるかにマナーがよくて清々しい若者達も大勢居るのだ。

彼らは多分スポーツをやる中でマナーやエチケットというようなものを自然に身につけたのであろう。
 スポーツ選手には、相手を叩き潰すと言う闘争本能の中にも、必ずルールやマナーを守り、戦う相手を思いやると言う根本思想がある。
若者達は指導の仕方ひとつで、立派な人間に成長したり、そうでない若者になる場合もある。これは全て家庭のしつけに始まる。大人は子供達を叱ったり嘆げいたりするけれども本来反省すべきは大人たち本人のような気がする。

学校は知恵や知識である歴史や文法や方程式などを学ぶ場所であり、人間としての基本的なしつけやマナーや思いやりの心は、学校の先生に頼るのではなく、スポーツや遊びの中で自然に身につけたり、家庭でしつけるものだと思う。昔は道徳教育と言ったと思う。

家庭でのしつけをする上では、将来この子が世に出て恥をかかない為にと、
例えば、子どものうちに、箸の持ち方や食べ物の好き嫌いを強制的に指導することも必要だと思う。そう、教育にはある意味での強制は必要なことなのだ。

Team Takada のメンバーはきちんとした挨拶の仕方や箸の持ち方を徹底的に矯正するし、強制的に英会話を学ばせる。我慢する心の指導も大切だ。
最近の大人たちは、本当に親としての責任をはたしているのだろうかと疑問に思うことがある。ジュニア達は、ただの猫可愛がりでは大物は育たない。 

スポーツは子供にマナー・エチケット・闘争心などのほかに、我慢や謙譲の心などを心や身体に叩き込む。家庭では難しすぎると思われるような子供の教育も、スポーツ指導の中でスポーツを楽しみながら自然に無理なく覚え身につけて行くものなのだ。ここにスポーツのすばらしさがある。

ボウリングのコーチを選ぶ時も、単にボウリングの技術だけを教えるのではなく並行して人間性の指導、国際感覚の指導などの必要性をしっかりと自覚したうえで実際に継続的に指導してくれるコーチを選択して頂きたい。
それが子供の将来の為なのだから。
今ではJOC選抜のジュニア・オリンピックの候補選手に対してさえ、もう今では語学教育も強制的に実行されている。
昔のスポーツマンはスポーツさえ強ければそれで通用した。
今や一流のアスリートはスポーツ馬鹿では通用しない時代になってきたのだ。

日本の子供たちは皆な素晴らしい才能を持っている。
才能豊かなスポーツ選手は努力することで一流選手になることは可能だ。
しかし超一流の選手になるには、優れたコーチによるサポートが必要である。

私は指導者として、西陵高校バレー部のメンバーのように礼儀正しい超一流の若者を育て行きたいと願っている。

『スポーツには、健全な身体と共に健全な人間性を育むパワーがある』

          財団法人 日本オリンピック委員会 情報・戦略 強化スタッフ    田 誠


TOPICSの一覧はこちらから